旬の農作物なう!

シャインマスカット:すい整形・ジベレリン処理

2021.07.01掲載

山形県は全国第3位のぶどう産地です。
6月中旬に、天童市干布でぶどうを栽培する花輪学さんの畑を訪ねました。花輪さんは、大粒で種がなく皮ごと食べられる人気の品種「シャインマスカット」を栽培しており、9月下旬からクリスマスの時期頃まで出荷・販売しているそうです。
今回は、形の整った果実をつくるために必要となる「花穂(かすい)整形」と、実は種がある「シャインマスカット」の種を無くすために必要となる「ジベレリン処理」について、取材しました。


@ 花輪さんの「シャインマスカット」の畑です。おいしい果実をお客様に届けるため、長梢栽培という手法で、丁寧に育てあげています。

A これがぶどうの花穂です。このまま育てると大房になり、粒が小さく、味がのりません【左図】。
房型を整えておいしく大粒な果実に仕上げるため、「花穂整形」を行い、先端の3.5cmだけを使います【右図】。

B 花穂整形作業の様子です。ハサミを使って丁寧に房の大きさを整えます。
ぶどうの開花はドンドン進みます。作業が遅れてしまうと、房型が整わなくなってしまうため、繊細かつスピーディーに作業を進めているそうです。

C 左が開花始期、右が開花後(満開)の状況です。花が咲ききって、全体が粒々となってきた頃(右図)が、1回目のジベレリン処理の適期です。
すでに、「ぶどう」のような形になってきていますね。

D 確実に種無しにするため、開花状況を見極めながら、1房1房丁寧にジベレリン液に漬けていきます。
腕を高く上げて、房を傷つけないように慎重に作業していきます。多い日では、1,000房以上も処理するそうですよ。

E ジベレリン処理の忘れがないように、野菜用の接ぎ木クリップを目印に使うなど、工夫して作業をしているそうです。
今回が第1回目のジベレリン処理作業になりますが、大粒なぶどうに仕上げるため、同様な作業を満開後10〜14日に、もう1度行います。

2回のジベレリン処理作業が終了すると、果粒がドンドン大きくなり、より「ぶどう」らしくなってきます。次回は、7月頃に摘粒の作業について、取材する予定です。

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シャインマスカット:摘粒・袋かけ

2021.08.23掲載

今回は、大粒でおいしいぶどうを作る上で最も重要となる「摘粒作業」と、摘粒した果実を収穫までしっかりと守るための「袋かけ作業」を紹介します。

1 【摘粒作業(7月上旬〜中旬)】


@ 7月の「シャインマスカット」の房の様子です。6月の時点ではまだ果粒が小さい状態でしたが、果粒が大きくなり、ぶどうらしい形になってきました。
まだ、このままでは、粒数が多過ぎて、大粒で食べごたえのあるぶどうにならないので、余分な果粒を間引きます。

A 摘粒作業は、粒の大きさや房の形を決めるとても重要な作業です。
花輪さんの果樹園では、収穫の時に、房の大きさが700g程度で40〜50粒程度となるように房の形をイメージしながら、摘粒作業を進めて行くそうです。

B 摘粒作業の様子です。房の上部は、しっかりと軸のまわりが果粒で埋まるように、上向きの果粒を多く残します。

C 房の中央部は、果粒の大きさや配置をみながら、混んでいる部分等を間引き、横向きのものを残します。

D 房の下部は、ぶどうらしい円錘形になるように、粒数を少なめにして、下向きの果粒を多く残します。

E 摘粒後の様子です。しっかりと粒数を制限することで、残った果粒に養分が集中し、より大粒でおいしいぶどうに仕上ります。

F 大粒でおいしいぶどうを作るためには、この摘粒作業を丁寧かつスピーディーに進めていく必要があります。 繁忙期には朝5時頃から作業を始め、1日に300房も摘粒作業を行うそうですよ。

2 【袋かけ作業(7月下旬〜8月初旬)】


G 摘粒作業が完了したら、病気や虫などからぶどうを守るために、袋かけ作業を行っていきます。

H 「シャインマスカット」は、日当たりが良過ぎると、果粒の表面が変色してしまう場合があります。
花輪さんの果樹園では、果粒の変色を防ぎ、綺麗な房に仕上げるため、緑色の果実袋を主に使用しているそうです。

I 果実袋には、緑色の他に、白色や青色のものもあります。花輪さんの農園では、おいしいぶどうに仕上がるように、日当たりなどを考慮しながら、様々な果実袋を使用しているそうです。

J 袋かけが終了すると果房の管理はひとまず終了です。
花輪さんの果樹園では、8月下旬頃からの収穫を予定しているそうです。

順調に果粒の肥大が進み、おいしい「シャインマスカット」に仕上がってきています。次回はいよいよ収穫作業について、取材する予定です!

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シャインマスカット:貯蔵出荷

2021.12.17掲載

本県における「シャインマスカット」の収穫は、8月下旬頃からスタートし、出荷盛期は9月下旬頃で、概ね10月いっぱいまで出荷が続きます。
それに加えて、本県では全国的にみて北に位置する産地としてのメリットを活かして、クリスマスやお歳暮需要に向け、12月中下旬頃に貯蔵品の出荷も行っています。
生産者の花輪さんは、山形県園芸農業研究所が開発した長期貯蔵技術(水分補給)を行っており、その技術を活用した貯蔵出荷作業について紹介します。


@ 花輪さんの農園では、貯蔵用に青色袋で栽培した果房を用いているそうです。
青色袋は、白色や緑色に比べて、果房がゆっくり成熟する特徴があります。そのため、遅くまで樹に成らせておくことができるので、貯蔵出荷に適しています。

A まず、貯蔵作業にとりかかる前に果房の状態を確認します。
傷んでいる果粒があった場合、貯蔵中の腐敗の原因となってしまうため、丁寧にハサミで取り除きます。

B 貯蔵する際は、こちらの水分補給容器(商品名:フレッシュホルダー)を使用し、1〜2℃程度で冷蔵貯蔵します。
こちらの容器を使用することで、果粒の軟化を防止するとともに、果房の軸が茶色く変色することも防止できます。

C 果房を果実袋に戻した後に、軸が水分を吸い上げやすくなるように、ハサミで斜めに軸を切ります。

D 次に、水をためたボウルの中に軸と容器を入れ、水が入った容器の中に軸の先端を挿入します。

E なお、軸の先端を容器に深く挿入し過ぎると、水分がうまく補給されないため、先端2〜3cmだけ挿入することがポイントです。

F 挿入が完了したら、コンテナの中に収めて、12月中下旬頃まで概ね2ヶ月間キンキンに冷えた冷蔵庫の中で貯蔵します。
また、貯蔵中に水が軸から吸収され、容器の水が空になってしまう場合があります。その場合は、再度、容器に水を入れ直す等、こまめに貯蔵の状態をチェックしているそうです。

G 貯蔵中の冷蔵庫の状態です。花輪さんの農園では毎年1,000房程度、貯蔵・販売をされているそうです。

H こちらが実際に、貯蔵が完了した房です。1粒ごちそうになったのですが、水分補給を行っていたので、果実にハリがしっかりとあり、ジューシーでとても美味しかったです。
クリスマスやお歳暮需要向けに、12月下旬中心に販売されるそうですので、店頭で見かけた際は、山形県の「冬のシャインマスカット」をぜひお楽しみください。

次回は、今年度の締めくくりと来年度に向けたスタートとなる剪定作業について、取材する予定です!

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シャインマスカット:剪定

2022.3.11掲載

剪定は、果樹栽培において欠かせない大事な作業です。
ハサミやノコギリで枝数を制限することで、残された枝に養分が集中し、おいしいブドウが出来上がります。
本県の「シャインマスカット」は、主に短梢栽培という仕立て方で育てられており、花輪さんもこの栽培方法を導入しています。
今回は、その短梢栽培での剪定方法について、紹介します。


@ 剪定前の樹の状態です。主枝(骨格となる枝)が一本状に伸びており、そこから結果枝(果実が成る枝)が伸びています。
短梢剪定では、この結果枝を短く切り詰めていきます。

A 剪定する前にまず芽の状態を良く確認します。おいしいブドウを作るためには、充実した枝(芽)を残すことが重要になるそうです。

B 枝の状態を確認したら、剪定を始めます。
枝を切る際は、残す芽の手前の芽の位置で、枝を切ります(犠牲芽剪定という)。
こうすることで、残す芽が凍害に遭いにくくなります(凍害に遭うと芽が枯れてしまう)。

C 剪定後の枝の状態です。短梢剪定では、1本の枝につき、芽を2つ残す2芽剪定が一般的です。

D 芽の状態を確認しながら、リズム良く剪定を進めていきます。
短梢剪定は、連続してハサミを使い続けるので、見た目以上に、手首等への負担が大きいハードな作業です。

E また、左図のように1ヵ所から枝が四本もあると、夏場に枝が混み合って暗くなり、おいしいブドウができません。
そのため、枝数が多い場合は右図のように枝数の間引き作業を行います(枝を2本に整理)。

F 剪定終了後の状態です。
剪定前に比べて、枝が短く整理され、とてもスッキリしました。
今年もおいしい「シャインマスカット」が期待できます。

「シャインマスカット」は各産地で生産が拡大している全国で今、最も注目されているブドウ新品種です。
山形県でも、年々栽培が拡大しており、花輪さんのような熱心な農家さんが丹精を込めておいしいブドウを作り上げています。特に本県では、遅場産地の特徴を活かして、クリスマスやお歳暮需要に対応できるような高品質な「シャインマスカット」生産に取り組んでおりますので、店頭で見かけた際にはぜひご賞味ください。
花輪さん、お忙しいところ取材協力ありがとうございました!

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