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きく(切り花):定植、摘心

2022.06.20掲載

 「きく」は花の中で、全国で最も多く栽培されており、花の大きさや枝数から「輪ぎく」、「スプレーぎく」、「小ぎく」の3種類に分類されて流通しています。
村山地域では、山形市、上山市がきくの産地で、ビニールハウスを使わない露地で8月〜10月出荷に向けた栽培が行われています。

 5月下旬に山形市高瀬の齋藤(さいとう)(みのる)さんを訪問しました。9月出荷に向けて栽培している「輪ぎく」圃場で、定植(植え付け)作業や摘心作業の様子を取材しました。

@ 定植前の状態。きくを定植するところは排水対策のため、約15p程度高くしています。

A セルトレーで約3週間育てた苗を定植します。苗の大きさは約10pです。

B セルトレーから苗を取り出し、植えるところに置いていきます。

C 苗の状況です。あらかじめ畑に張ってあるひもに沿って植えていきます。

D ある程度苗を並べたら、植えていきます。定植時間を短くするため、中腰姿勢で行っています。

E シャベルで穴を掘り、そこに苗を入れて、植え付けます。地際部を強く押さえ付けないよう注意して植えています。

F 定植作業を終えたら、苗に水を与えるためと、苗と土の隙間を埋めるため、かん水します。

G かん水を終えたら、定植作業の終了です。

H 定植の約1週間後に、茎の先端を摘む「摘心」を行います。生長点を確実に摘むことを心がけています。

I 摘心は、葉の付け根にある芽(腋芽(わきめ))を吹かせるために行う作業です。

 きくの定植から収穫までの栽培期間は約3〜4ヶ月です。この間、今回紹介した定植、摘心の他に、側枝整理、フラワーネット設置、摘蕾、病害虫防除などの作業が続きます。「きく」は花だけでなく、葉も売り物になるので、最後まで気が抜けません。

 次回は、摘心後に伸びてきた腋芽(わきめ)を3本だけ残す「側枝整理」作業を紹介します。

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きく(切り花):側枝整理・支柱立て

2022.08.23掲載

 今回は、定植後に行う「側枝整理(3本仕立て)」と「支柱立て」の作業の様子をご紹介します。

 最初に「側枝整理」の作業についてです。
 摘心作業を行うと、その下にある葉の付け根から芽が伸びてきます。伸びてきた芽(側枝)が10〜15p伸びた頃に3本だけ残して、他の芽(側枝)を間引く作業を行います。
 全ての芽を伸ばした場合、出荷に適した「きく」が少なくなり、病害虫が増える原因にもなるため、この作業が行われます。

@ 7月上旬に圃場で側枝の整理作業が行われています。

A 摘心後の株からは芽が3〜6本程度伸びてきます。

B なるべく芽の長さの揃った3本を残し、その他の芽は付け根から丁寧に折り取ります。

C 折り取り時に注意することは、残す芽の葉を折らないこと、作業に集中し体の後ろにある株にぶつかないようにすることです。

D 側枝整理作業が完了しました。側枝を3本にすることで、残した芽全体に日光が当たるようになり、生育が良くなります。

 次に、フラワーネットを支えるための支柱立て作業の様子をご紹介します。
 側枝整理の作業が終了したら、きくの株元にかん水するためのかん水チューブ(写真では、きくときくとの間にある青く、細長い筒状のもの)を設置します。
 基本的には雨水だけで栽培可能ですが、雨が降らない時に備えて設置します。
 その後、きくの株の上にフラワーネットを設置します。これは強風や雨できくが曲がるのを防ぐために行います。

@ フラワーネットを設置するため、(うね)の両端と途中にフラワーネットを支えるための支柱を立てます。支柱には角材や鉄パイプ、イボタケなどが使われます。
当圃場では、角材を使用しています。理由は、強風でも倒れにくく、フラワーネットが下がりにくいためです。
まずは、立てる場所に角材を置いていきます。

A フラワーネットには、いろいろなサイズがありますが、齋藤さんは20p×20pの3目のネットを使用しています。

B フラワーネットを設置する際は、芽の上にネットが来ないように張っていきます。

C 支柱を立てたら、最初にハンマーで倒れないように打ち込みます。

D その次に小槌でたたいて、支柱の高さを微調整します。その際、フラワーネットを足で支えて、下がらないようにします。

E 8月上旬の畑の様子です。フラワーネットを草丈に応じて上げていきます。草丈は90pとなり、杭の頭より大きくなりました。

F 8月上旬の雨が降った直後の様子です。畝の通路に水が溜まっています。畝を通路より高くしているのは、株元に水が溜まらないようにするためです。

 次回は、「摘蕾」と「収穫」の作業を紹介します。

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きく(切り花):摘蕾・収穫・出荷調整

2022.11.7掲載

今回は、不要な蕾を摘み取る(てき)(らい)作業、収穫作業、出荷調整作業の様子をご紹介します。

 最初に、9月上旬に行う摘蕾作業について説明します。これは、一番上に咲く花((ちょう)())一つを残して、他の芽や蕾を摘み取る作業です。齋藤さんが栽培している「輪ぎく」では必須の作業となります。

 摘蕾作業は、蕾や芽を摘み取りできる大きさになったら、なるべく早く行います。早く行うことで、大きい花ができるようになり、また、摘蕾した痕が小さく、見た目が良くなります。

@ きくの先端に数個の蕾が見えます。これらの蕾のうち頂花を除いて摘み取ります。

A 摘蕾作業は指で丁寧に折り取るように行います。

B 摘蕾作業中、頂花や葉を摘まないよう注意しながら行います。

C 摘蕾作業後の様子。頂花だけを残し、他の蕾を取り除きました。

 次は、9月中旬に行う収穫作業です。
 収穫は、消費者の方が購入してから長く観賞できるように、花が開く前に行います。そのため、畑では、見ごたえのある花が咲くことはありません。
 収穫作業は朝か夕方の涼しい時間帯に行います。齋藤さんは基本的に朝に収穫しており、取材日は午前5時頃から黄色のきくの収穫作業をしていました。

@ 花が3〜4分咲きとなり、収穫時期を迎えました。

A 収穫作業中です。収穫に適したきくの株元を柄の長い鎌で切り取ります。(右手に持っているのが鎌です)

B 切り取ったきくを花や葉を傷つけないようにフラワーネットから取り出します。取り出したきくをフラワーネットに立てかけます。

C ある程度まとまった量になったら、きくを集めます。

D 集めたきくをあらかじめトラックの荷台に載せたむしろに置き、輸送中に花や葉が傷まないように囲います。

E むしろで囲った様子。これらをトラックに満載して出荷調整する作業場に運搬します。

 最後に、出荷調整作業です。
 収穫してきたきくを出荷調整作業を行う小屋に運び入れます。
 出荷調整の主な作業は、選別、下葉取り、結束、箱詰めなどです。

@ 収穫したきくを小屋に運び入れます

A むしろからきくを取り出し、重量選別機にかけて1本1本仕分けします。

B 重量選別機では茎の重さによる仕分けの他に、指定した長さで切り揃えることができます。

C 選別機で仕分けされたきくは、花や葉が傷んでいるものや病害虫の有無を確認(写真奥)した後に、10本ずつにまとめます(写真手前)。

D 10本にまとめたきくを下葉取り機にかけて、切り口からこぶし2〜3個分の葉を取り除きます。

E 葉を取り除いた部分を結束機にかけます。これらの機械により出荷調整作業の省力化が図られています。

F 結束後は写真のように10本1束にまとめられたものが出来上がります。

G 最後の行程となる箱詰め作業です。今回紹介するのは8束を箱に詰める方法です。まず、写真のようにダンボールを組み立て、花が来る位置に純白ロールを敷きます。

H 箱には上下2段に分けて詰めます。下段に4束を入れ、花のところを純白ロールで覆い、輸送中に傷がつかないようにします。

I 続いて、上段の箱詰めです。上段の花は下段の下葉を取り除いたところに置くため、その位置に純白ロールを敷きます。

J 下段と同様に4束を箱に入れます

K 上段の花を純白ロールで覆い、ふたをして完成です。

L 箱詰め作業が完了しました。

M 箱には産地を示すため「高瀬の菊」と明記されています。また、この箱に入っている品種名を書き入れ、本数、等級、長さの欄の該当するものに丸印を付けて、市場に出荷します。

 今回、齋藤さんの御協力を得て5月から約4カ月間、きくの定植から収穫、出荷までの作業を紹介してきました。
 取り上げた作業は主要なもののみで、すべては紹介できませんでしたが、他に病害虫防除、雑草管理、かん水、今後は親株管理等の作業も行われます。
 齋藤さんは「きくは切り花の中でも手間のかかる品目です。そのため、消費者の方々にはきくの栽培方法を知ってほしいとずっと思っていました。きくには様々な花形や花色があり、バラエティに富んでいるので、花屋さんに行ってみてください。」と話されていました。
 齋藤さん、お忙しい中、取材に御協力頂きありがとうございました。

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