旬の農作物なう!

たらの芽:仕立て作業

2022.06.29掲載

山形県の「たらの芽」生産量は日本一で市場評価も高く、北村山地域では尾花沢市と村山市が主産地で、1月から4月始めにかけて出荷されています。山菜の王様と呼ばれている「たらの芽」の栽培は、畑に苗を植えて「たらの木」を育て、晩秋に木を切って小屋に保管し、12月頃からハウスで温めて新芽を収穫します。今回は仕立てから収穫までの作業を追って紹介していきます。

5月16日、「仕立て作業」をしている井向隆文さん・美也子さん夫妻の「たらの木」畑にうかがいました。井向さん夫妻は、美也子さんの実家がある尾花沢市に3年前に移住し、夏はすいか、秋はだいこん、冬から春にかけて「たらの芽」を出荷しています。

@ 雪が解け、気温が高くなるにつれて、「たらの木」から新しい芽が吹いてきました(右が仕立て作業中の井向美也子さん)。

A 仕立て作業は、1本の木から複数伸びてきた芽を、1本だけ残して切り取ります。伸びるにつれて硬くなり、木に成長していきます。木をのびのび育て、充実した「たらの芽」を収穫するための重要な作業です。

B 「ひこばえ」と呼ばれる新しい芽もいたるところから伸びてくるので、雑草と一緒に刈り払います(作業中の井向隆文さん)。

C 作業してから1か月後の畑の様子です。1m程度にまで伸び、通路まで葉が広がってきました。

次回は11月頃に、2m以上に伸びた木を切り取り、畑から運び出して小屋に保管する「穂木採取」の作業をお伝えします。間が空きますので、しばらくお待ちください。

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たらの芽:穂木採取

2022.12.08掲載

今回は、畑で生育している「たらの木」の様子と、木を切り取って自宅の小屋に保管するまでの作業を紹介します。

@ 8月下旬の生育盛期の様子です。高さは2mを超え、「たらの木」の林になっています。

A 10月中旬の落葉期の様子です。葉の色は緑から褐色に代わり、下の葉から落葉が始まっています。

B 畑に近づいてのぞくと、落葉した様子がよくわかります。

C 落葉した葉の付け根には「たらの木」の新芽がついています。これが発芽すると「たらの芽」になります。

D 11月中旬に穂木採取の様子を取材にうかがいました。この日は小春日和で、作業しやすい日でした。

E 穂木切り作業をしている隆文さんです。刈り払い機の刃にチップソーをセットし、勢いをつけて同じ方向に切り倒します。

F 2芽(2節)を残してきれいに切れました。来春、この芽が伸びてきます。
切り口の左側に前年の切った跡があり、更に左下にその前の年に切った跡が見えることから、3年目の木だということがわかります。

G 同じ長さの木を7本程度集め、上下2か所をひもで結び、運び出しています。「たらの木」はトゲが多いため、皮手袋をしての作業となります。

H トラックの荷台につけて、畑から自宅の小屋に運びます。

I 寒い場所に立てかけて並べ、しばらく保管します。1本に約20芽がついています。

次回は2月下旬頃に、木を1芽ごとにカットし、暖かいハウスに入れて芽を伸ばす「促成」の作業をお届けします。春の訪れまでしばらくお待ちください。

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たらの芽:促成、収穫

2023.3.14掲載

暖かい日が続き、春の訪れを感じる季節となりました。今回は、井向隆文さん・美也子さん夫妻のビニールハウスにうかがいました。秋に畑から切り出し、小屋に保管していた「たらの木」のカットから、ハウスに入れて芽を伸ばす「促成」までの作業を紹介します。

@ 1月末に、「たらの木」を芽のついた節ごとに切断し、10〜20cm程度の「駒木」にします。「駒木」は翌日まで水に浸けて、十分に水を吸収させます。

A 「駒木」を取り出し、プラスチック製の育苗箱に並べます。トゲが多く大変な作業ですが、手前から奥に向けて「駒木」がひな壇状になるように並べると、「たらの芽」に傷がつかず、収穫もしやすくなります。

B 「駒木」の切り口から樹液がでてくるので、並べ終わったら切り口を水道水で洗い流します。県内でも積雪が多いので、ハウス周囲の除雪も欠かせません。

C 次は「促成」の作業です。トンネルに駒木を入れ、底面が浸る程度まで水を入れます。トンネルを閉め、電熱ケーブル(温床線)でトンネル内を15℃前後に温めて、春のような環境をつくり出します。

D 促成してから19日後の状態です。「たらの芽」が大きく膨らんでいました。数日後にはガクが割れ、葉柄が伸びて収穫できるようになります。

E 促成から26日後、いよいよ収穫が始まりました。収穫は、トンネル内の育苗箱から芽がついた「駒木」ごと、丁寧に引き抜きます。

F 一つずつカッターで「駒木」から「たらの芽」をていねいに切り離し、大きさごとに仕分けます。

G 調製が終わった「たらの芽」です。親指程度の大きさで、緑が濃く、見た目もきれいに整ったおいしそうな「たらの芽」が収穫できました。

H 大きさごとに50gずつトレーにきれいに並べ、ラップをピンと張ってパック詰めします。

I シールを貼り、1kg用の出荷箱に20パック入れて出荷します。
「一足早い春の山菜を届けたい」という思いを込めた美也子さんの笑顔が印象的でした。

「たらの芽」は主に東京の市場に出荷し、料亭、旅館等の業務用途を中心に購入され、一足早い春を告げる高級食材として提供されています。県内では量販店にも並んでいますので、山形県産の「たらの芽」を見かけたら是非手に取り、春の味をご賞味ください。

今回、快く「たらの芽」の取材を受けてくださった井向隆文さん、美也子さん夫妻、どうもありがとうございました。

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